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空想DIYを紹介するページです。


電流とは何だろうか

回路図のご要求を受けてふと気づけば1年近くも何も書き込んでいませんでした。
好奇心も海水に似ている。好き易の・・・。
とは言え、ホームページの方もあまりほっておくと使い方を忘れてしまいそうなので、
とりあえずは雑記でお茶を濁しましょう。
今回は「電流」について書いてみようと思います。
もちろん一般的なものではなく、自己流の空想です。

温度

電流について空想するには自由電子についてのイメージが必要で、
そのためにはまず温度についての自己流のイメージについて話すのが良いと思います。
一般には固体結晶内の「温度」は原子核の振動とか電子の運動エネルギーといったイメージで説明されます。
しかし、これは私にはイメージし難いのです。
いやイメージしにくいという程ではないのですが、飛躍を感じるというか、どこかしっくりこないのです。

人のサイズに対して手ごろな大きさ、例えば100mmの結晶を考えてみます。
仮に室温程度での電子の速度を5万km/sとして、100mm進むのに必要な時間は2nsで、
これは人の感じる時間スケールより十分に速いので、
人にとって結晶内の電子はエネルギー的に十分中和安定した状態として観察されるはずです。
このような状態では、結晶内の電子の状態は、結晶の繰り返し毎に周期的であると考えてほとんどズレがないでしょうから、
周期境界条件で畳み込んで、結晶のユニットセルだけを空想すればよいと考えられます。
従って、量子理論的な考え方はとても合理的に感じますし、イメージしやすいです。
ところが、熱の伝導はそうは行きません。
熱拡散長は比較的熱伝導の速い銅でも1秒間で20mm程ですから、100mmだと(100/20)^2=25秒掛かります。
この時間は人の感じる時間のスケールで十分速いとは言えないので、もはや周期的な畳み込みではイメージが追い付きません。
数日間掛けて十分に温度が一様化した後の状態であれば量子理論で考えてよいと思うのですが、
熱伝導を考える場合には、量子理論から外挿したイメージが果たして正しいだろうか、
いや周期境界条件と言う仮定条件から外れた段階で、もはや参照してはいけないと考えるべきだろう、
と感じてしまう訳です。
では電流はどうでしょうか。
後述しますが、電流も人のサイズで手ごろな大きさに対して、人の感じる時間スケールより十分速いとは言えないです。
このような現象を当たり前のように量子理論から外挿して説明するということに飛躍を感じる訳です。
ところが実際には、量子理論からの外挿でそれらしく計算することが出来ます。
所詮は人の考えた空想、単なる数学ですので、現象を計算できるならばそれで良いだろう、という点には同意しますし、
実際に便利に参照させてもらっている訳ですが、
実験値からずれている事もまた事実で、従って厳密性に欠きますし、
何より飛躍に蓋をしてそれらしく合わせこんでいる感じというのは「空想」する上では面白くない気がするのです。

温度が高いときに電子の運動エネルギーが大きくなるのは疑いようがありません。
静止しておらず、かつ(少なくとも集団全体として)ある範囲の空間にとどまり続ける電荷には加速度が必要です。
電荷が加速度運動すると電磁波が発生します。
電磁気学では自己インダクタンスに蓄積されるエネルギーについて、
荷電粒子の運動が持つ物でも、空間に電磁場エネルギーとして持つ物でも良く、
どちらでも計算出来て区別の必要がないので、現象によって計算しやすい方を選んで計算します。
しかし「どちらがより厳密か」と問われれば、
電荷の無い空間に存在する電磁波を説明できる「空間に電磁場エネルギーとして持つ」という方だと答えるでしょう。
まあ、「電子や陽子というものが、電磁波が狭い空間で循環安定している状態ではないか」と空想している私にとっては、
電子すらも電磁波の一形態に見えている訳ですが、・・・とっとっと、いきなり話が逸れてしまった、元に戻します。
ところが量子理論では電子が持つ物と断定して話が進みます。
どちらにせよ単なる数学、つまり記述の問題のはずで、たまたま電子として計算する数学が突出して進んだだけのことでしょう。
原子間隔での周期性が極めて強い原子核内の電子の軌道を空想する場合は、どの原子の状態もほぼ同じようになっているはずだ
と考えられますから、周期境界条件で畳み込んで空想し、「電荷が持つ」と考えた方がイメージが明確になる点には同意します。
しかし原子間隔での周期性との同期がほとんどない温度については、
格子振動や電子の運動エネルギーではなく電磁場エネルギーであると考えても良いはずで、
こう考えた方がより理解しやすい現象と思えますし、より厳密な気もするのです。
そもそも熱の伝搬で仮定されるフォノンというのはかなり無理のある存在で空想しにくいのです。
なにしろ電子間の相互干渉の具体的イメージが希薄なまま、
ブラッグ反射により「運動量を保存せずに移動方向を変える」と言うのですから。
気体の場合は温度を分子の運動エネルギーと考えるのは空想しやすいですが、
固体の場合は分子間を行き交う電磁波と考えた方が、少なくとも私には空想しやすい。

電子が加速度を受けると電磁波が発生します。
仮に原子核の周辺を走り回る電子の軌道が完全に球であったとしても電子は加速度を受け、
原子は周辺に電磁波をまき散らしているはずです。
複数の原子があると、互いの電磁波が干渉しあい、空間の電磁波のエネルギーは全体として最小になるように分布しようとする。
結果空間に残る(蓄積される)電磁エネルギーが温度であると考えるわけです。
この電磁波は、電磁波と言うよりは定在波に近いイメージで、固体内に閉じ込められたような状態になっているでしょう。
電磁場は電子を加速させますから、温度が上がると原子核に強く補足されていない電子ははじき出されます。
いわゆる自由電子です。
自由電子は長距離ジャンプして電子が不足状態にある原子に補足され、
その際に受ける加速度でその場所に電磁エネルギーを放出します。
電磁場エネルギーは場のエネルギーが最小となるように分布しているはずですから、
長距離ジャンプ中の電子はあまり大きな加減速を受けないでしょう。
従って、原子内の電子同士の相互干渉と比べると、
温度としての電磁波と自由電子のエネルギーのやり取りの頻度は遥かに少ないと空想されます。

こうやって自由電子は熱エネルギーを運ぶと想像する訳です。
このように考えると、温度は空間に蓄積されるエネルギーなので、原子量とはあまり関係がないことも想像しやすいし、
平均自由行程といった計算の都合で導入する仮定が現実の現象としてイメージできるようになります。
また、熱エネルギーが温度だけではなく、相変化や化学変化で増減するのも、
電子の運動エネルギーとのやり取りを行っているのだからごく当たり前にイメージされます。
この空想方法の楽な所は、無数の電荷間の相互作用について考えるのではなく、
その結果出来る安定なエネルギー場と、ある程度限定された領域での電荷との、相互作用を空想すればよい所で、
そもそも無数の電荷の相互作用なんか、シミュレーションは出来ても空想可能なのはごく限られた状況に限定されてしまいます。
場のエネルギーが一様になろうとする傾向をエントロピー増大則のように現象として受け止めて、
これとの作用について考えた方が、より複雑な現象について空想しやすい訳です。
例えば、光によって電子が励起されるという現象も、
温度と電磁波が等価なものと考えれば、より具体的なイメージとなって空想できます。
電磁波は加算できるので、電磁波が通過するという事は、一時的に温度が上がるのと等価な訳です。
高温に相当するエネルギー準位が電子にあれば、加速を受けた電子はその平均速度で安定するでしょうから、
電磁波のエネルギーは電子の運動エネルギーに分配されるでしょう。
(電子軌道の安定性としてのエネルギーポテンシャルは温度としての電磁波のエネルギーよりも桁違いに大きいでしょうから、
直接的な(瞬時加減算的な)分配ではなく、共鳴(共振)的な現象を介してエネルギーをやり取りするでしょう。)
これもエネルギーが一様になろうとする性質と考えれば、
電磁場エネルギーが高く、電子の運動エネルギーが低ければ、互いの干渉の結果、等分になろうとするでしょう。
元々は温度が低いのだから高温相当の準位の電子は少なかったはずで、
結果電磁波から電子の運動に分配されるエネルギーの方が多くなって、
全体としては電磁波エネルギーの相当分が電子の運動エネルギーに変換されるでしょう。

さて、場のエネルギーが最小となろうとする傾向と言うのは
空間内の原子の位置関係や、電子の軌道を決定する際の基本的な考え方でもあります。
冒頭にも書きましたが、量子理論とは、うがって言えば、
結晶の周期性を仮定条件として(周期境界条件で)場のエネルギーが最小となるような点電荷の位置関係(分布)を
計算するようなものですが、
量子理論の結論として、単原子内の電子の束縛状態がずれるときの場のエネルギーの増大が非常に大きい
(従って電子の軌道は強く限定される)ことは誰もが知る所です。
このような非常に硬い束縛状態で電磁エネルギーが安定しているところに、
温度と言う緩い状態が電磁場として許されるでしょうか?。
答えは自明で、電磁波は加算可能なので、より強固な安定状態を生む電磁場状態と温度と言う緩い電磁場状態は、
CGでレイヤーを重ねるように独立に分布可能でしょう。
量子理論的に束縛されない(あるいは束縛が極めて緩い)範囲の電子の状態については、
独立の電磁エネルギー安定が成立することが可能となります。
量子理論で束縛されていない範囲と言うのは、
その仮定条件である結晶の周期性とは同期しない電磁場安定状態に支配されているという事であって、
全く束縛されていない状態ではない、と考える訳です。
エネルギーにも拘らず、何度か「熱」と言わずに「温度」と表現したのは、
熱エネルギーは原子核内に捉えられている電子の運動エネルギーの内、電磁波と相互干渉可能な成分を含めるからで、
これを分離して考える所にこの空想イメージの特徴があります。

さて結晶には強い周期性があり電子はその周期性に強く束縛されます。
特に閉殻構造、共有結合、イオン結合などの等方的な周期性を持って安定した状態では、
電子は極めて周期的な範囲でしか動くことが出来ません。
また遷移金属のような内殻電子が全ての安定点を埋めていない元素や、希土類のf軌道、核遮蔽効果を伴う重い元素の電子なども、
多少周期性から遮蔽されることにより特異な現象は示しますが、自由電子ほどには周期性から逃れられていません。
金属元素のいわゆる「自由電子」は、固体の電子の中で結晶周期性束縛の非常に少ない稀有な存在と言えるでしょう。
ただし、自由電子でなくとも電子軌道には各々の準位に幅(空間)があります。
この幅の範囲でのみ、結晶周期性とは別の電磁エネルギー安定性が作用可能と考えられます。
この意味でバンド理論と言うのは、計算の仮定条件である周期性から外れた現象を外挿して
それらしく説明するための大変巧みな手段であると思われます。
もっとも、バンド理論が最初からすんなり理解できた人は、自発的には何も理解できない純粋な模倣者であって、
違和感を感じつつもその便利さに染まっていくのが正常な論理思考の持ち主であろう、とも思います。


電流

電磁場のエネルギーは交流である必要はありません。
ただし、電子が行ったまま帰らないと電子の移動が発生するので、
電子が平均的に移動しない場においては、電磁場は交流的であることになります。
従って、温度とは交流成分という事になります。
では直流成分は何でしょう?。そう、それが電流である訳です。

電流は、電流が流れている素材の周辺(=空間距離を離してと言う意味で)に出来る直交磁界(静磁場)によって
測定される量です。
電磁波と静磁場は互いに干渉は持ちませんので、直流電流をまずは荷電粒子の平均的な移動として考えてみましょう。

1[A]の電流は、平均的に1[C/s]流れることです。
これが全て電子によるものとすれば、電気素量が約1.602 176 565(35)×10^-19[C]ですから(その逆数を取って)、
毎秒6.2415096×10^18個流れていることになります。
仮に、銅(Cu)の原子1個あたり1個の電子が全て平均移動に等分に関与したとして、
Cuの原子量は63.546[g/mol]、密度は8.94×10^-3[g/mm^3]、
アポガドロ定数が6.022 141 29(27)×10^23 [個/mol]ですから、
(アボガドロ定数/原子量)*密度=8.4722787×10^19[個/mm^3]となります。
6.2415096×10^18[個/s]/8.4722787×10^19[個/mm^3]=0.0736708[mm^3/s]となりますから、
断面積1[mm^2]の銅線に1[A]流したら74[μm/s](4.4[mm/min])です。
仮に0.5[mm^2]に5[A]流してもその10倍で0.74[mm/s]にしかなりません。

もちろん、これは平均的な流れであれば良く、
また観測する最高周波数以上の範囲であればその平均速度の増減も許されます。
更に、荷電粒子は生成消滅することなく平均的に移動するのであればよく、
その実体の速度がこれより何桁速かろうと、互いに複雑に玉突きしあっていようと、
全体として平均的にその速度で移動すれば良い訳です。
例えば仮に、0.1[fs]の期間に0.0001[fs]の間だけ1000[A]に相当する荷電粒子の移動があったとして、
そのとき観測される電流は平均である1[A]です。
あるいは例えば仮に、1000[A]に相当する荷電粒子が移動し、999[A] に相当する荷電粒子が戻ったとして、
その戻りの遅れが測定できないくらい速ければ、そのとき観測される電流は往復の差分である1[A]です。
電流から計算される荷電粒子の速度はあくまで平均的な移動速度であって、荷電粒子の実体の速度とは何の関わりもありません。

原子核の周辺に捉えられている電子の運動速度は銅くらいの原子番号で概ね光速の1%です
(原子番号の大きい元素ではもっと速い)。
原子間を飛び越える際の電子の速度も同程度と考えられます。
しかし、電流から計算される電子の「平均」移動速度はこれよりも非常に遅い。
ということは、電子はほとんど原子に捉えられていてごくごく稀に原子間を飛び越えるのか、
あるいは電流から計算されるより遥かに多量の移動が等方に発生しているか、
あるいはその両方である可能性が高い。
つまり、電流と言うのは測定できないくらい短い時間の電磁パルスの集合体であるかもしれない訳です。

電気抵抗

ところで、電磁場の交流成分と直流成分は互いに変換しあいません。
温度が交流成分で、電流が直流成分であるとすると、直流電流が流れても温度には変換されない、
つまり電気抵抗は発生しないはずです。
では電気抵抗をどうイメージするか。
これについて私はこう空想してみます。

原子核の電子は温度と干渉できます。
もし直流電流が原子核の電子に作用可能であれば、原子核の電子を仲介して直流電流から温度に変換できるかもしれない。
直流成分は方向性があります。
原子には異方性のある電子軌道、例えばd軌道があります。
直流成分が「ある方向のd軌道」にだけ選択的に干渉したとすれば、そこには分極が生まれ、
特異な電子加速空間が生じるのではないでしょうか。
これによって温度が上がる(電磁エネルギーの交流成分が増加する)と考えられます。
言い換えれば、
「電磁場は線形なので互いの波の間にエネルギーの授受はないが、
電子の運動は(クーロン力による支配のために)非線形なので、エネルギーの授受が生じる。
電流と言うものが単なる直流成分ではなく直流成分を含むパルス的なもの(広帯域の周波数を含むもの)だとすれば、
非線形状態を経由することで交流成分を増加することが出来る。」
となります。

とすると、自由電子の最外殻s軌道に対してd軌道が低いほど電気抵抗が低いことになりますが、
例えば第11族のCu、Ag、Auを比較すれば傾向は合っています
(実際の所は、各種現象を矛盾なく説明できるように空想した結果が上記のようなものなのですが)。
これらの元素は、最外殻s軌道が不対なので比較的高い(軌道半径が大きい)ですが、
それでも異方性の高いd軌道のピークには負けます。
原子の周期性による制約上はこれらは直交していて互いに干渉しないと計算されますが、
今は原子の周期性に束縛されない範囲の話をしているのだし、d軌道電子は温度との干渉性を持つのだから、
電流とd軌道電子が干渉したとても矛盾はしないでしょう。
d軌道との干渉を少なくするには、s軌道を高くすればよく、そのためには主量子数を増やせば良さそうなものですが、
実際にはあまり主量子数が増えると相対論的核遮蔽効果(内殻電子が光速に近づいて重くなる)により
s軌道は下がってしまいます。
従って、中くらいの主量子数が最もd軌道に対してs軌道が高くなる。
そのピークがどの辺にあるかと言えばAgにある訳で、金属の中でAgが最も電気抵抗率が小さい訳です。

(仮に電流をパルス的な電磁波の集合体だとすると、瞬間的に高温と同じになるのでd軌道電子が励起されるでしょう。
従って電気抵抗について考えるだけならば分極を空想しなくとも、
単にd軌道電子が励起されるとだけ空想すれば十分なのですが、
外部から電圧を掛けて電流を流す訳ですから金属内部には電界が印加され、
これを中和する電界の発生原因を自由電子の密度差に求める訳には行かない(密度はより強固な周期性束縛を受けている)から
励起分極が発生する方が自然ですし、
熱電効果やホール効果へと空想を拡げるためには、
特定の方向のd軌道(等方でなければd軌道でなくても良いのですが)電子だけが選択的に励起する
とイメージした方が都合が良いのです。)

高温超電導

ところで、d軌道のような異方性のある電子軌道は、周辺の原子(の異方性のある電子軌道)によって方向や形状を変化されます。
うまく周辺の原子配置を調整して、d軌道を押しやってしまえば、電気抵抗は更に低下できそうです。
これもまた高温超電導の説明となり得ます。
すなわち、
「高温超電導素材のCuO層はd軌道が押しやられてs軌道がむき出しになっているから電気抵抗が小さい」
と説明されるわけです。
d軌道を押しやっているのは隣の原子のマイナス電荷でしょうから、
温度が上がるとその隣の原子のマイナス電荷がs軌道電子の通り道を塞いでしまうでしょう。
つまり、この説明においても、あまり高温では超伝導は期待できそうにありません。
原子半径の大きい元素では、あちらを押さえればこちらが出て来ると言うように比較的自由な方向に曲げられますが、
原子半径が小さいと変化方向がかなり限定されますし、簡単に方向が曲げられるでしょうから、
どちらかと言えば小さい元素の方が有利なのかもしれません。




2013-4/1




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