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空想DIYを紹介するページです。


太陽光発電用照明の製作

これは今さらホームページに書くこともないくらい書き尽くされたネタであるが、
実用まで作った例は少ないので紹介する。

太陽電池で発電した電力を二次電池に貯め、必要な時に照明として消費する、というごくありふれたものを作る。

ソーラーパネル

対象となるソーラーパネルは公称5W。ただし、別の用途で長いこと使ったので、もうかなりくたびれたものである。
とりあえずどのくらいの発電量か調べてみる。
朝8:00、太陽光に直角にして、開放電圧20V、47Ω負荷で8.2V・・・1.4W。
夕方16:00、雲の合間の晴れ間で47Ω負荷で11V・・・2.57W。
なんかタイミング悪く昼間のデータがないが、まずは皮算用。
仮に12Vでの充電電流を最大0.25Aとして、日照6時間/日、日照の角度による減衰を50%として、
0.25A*6時間*0.5=0.75Ah/日。仮に5Ahのバッテリーで自己放電を0.1%/日とすると、
充電に回せるのは0.745Ah/日くらいとなる。
10Wを1回30分使うとして、半日位で充電可能な感じである。


バッテリーは何にしようか?

候補としては、鉛蓄電池(カルシウムバッテリー?)とかニッケル水素電池が考えられる
(リチウムイオンは充電回路が面倒過ぎる)。
手軽さではニッケル水素電池だろう。
充電電流は1Cが基本らしい。セリアの単三とすると、1300mAh(=1.3Ah)なので1Cは1.3A。
この電流で1時間充電が基本。
公称5Wの太陽電池ではこんなに流れようがないから、電流制限はかける必要がなさそうだ。
また太陽電池は出力インピーダンスが高いから、スイッチングレギュレータにしなくても
こんなに電流流せば自動的に電圧は下がる。
(5Wだと1Cは3.8Vに相当するが、そんなに低下したら5W出ないので、
放電終止電圧以下まで使ったとしても1Cを超えることはないだろう。)
電圧制限だけかけて直結で良さそう。太陽電池出力を12Vまで上げると電流がほとんど流れなくなるし、
満充電電圧は1.4V強らしいので、1.2Vの7〜8直列くらいが良さそうだ。
8直列で、実用電圧1.2V*8=9.6V、放電終止電圧8Vといったところだろう。
12Vへの昇圧回路を作り、これを基準電源として、2A/50V定格位のBip-Trのベースに与えて
エミッタ電位を11.4Vに制限する。
BE間逆耐圧が不足する場合は、基準電圧を少し上げて、エミッタに直列にダイオードをかます。
コレクタに太陽電池、エミッタにニッケル水素電池(単3*8直列)をつなぐ。・・・という感じか。
あるいは、
MOSFETのソース電位を抵抗経由で検知してゲート電位に昇圧結果を与える。
ゲートと抵抗間にツェナーDiを入れて、昇圧結果が一定以上になったら強制的に昇圧をクランプする。
満充電になったらツェナーDi経由の電流がなくても昇圧動作不要になるので、MOSFETはオフする。
ドレインと抵抗を高抵抗でつないでヒステリシスを作る(満充電になってドレイン電圧が上がったら、基準電位を引き上げて、
再充電開始電圧を下げる)。・・・というような感じか?。
 
と回路まで考えたが、以下の通りニッケル水素は却下。


光源はどうしようか?

白色LEDの明るさは、2004年当時1.4[lm]、最近4[lm]、日亜6[lm]くらいらしい。
かなり安物でも最近のなら4[lm]くらいは期待できるようだ。100個で400[lm]である。
しかし、以前調べた時、暗めのランタンが800[lm]くらい、室内の蛍光灯が1500[lm]/20W管くらいだったから、
400[lm]はかなり暗い。連続使用時間を短めに設定しても、200個くらいは使うところのようである。
200個を並べるとすると、例えば配線モールに1.5cm間隔程度(LEDの足が隣に届く範囲)で設置したとして、
配線モール4本で、1本あたり50個(25並列*2直列)といった感じか。結構作るのしんどそう。
LEDの効率は蛍光灯とたいして変わらないし、LEDはやめて車内用の12Vの蛍光灯を使うか?。
LEDの総消費電力は20mAの200個(100並列*2直列、直列抵抗0.8Ω)で14.4W。
20mAの100並列だと2Aなので1Cを超える。こんなに急放電してはいけない。仮に1A放電とすると50並列。
やはり単3では50並列が限界のようだ。
ウーン、やはりごちゃごちゃ考えるより5Ah位のバッテリーを使った方が良いのか?。
そもそも800lmで部屋全体を明るくするのには無理がありそうなので、手持ちライトの方が現実的か?。
感覚として、8畳(約13m2)くらいのスペースを照らそうとしたら、最低でも20W蛍光灯2個くらいは必要だろうから、
蛍光灯が70[lm/W]として、2800[lm](215[lm/m2]である。
多少暗めで納得するとしてもやはり800[lm]は暗過ぎる感じだ。2000[lm]は欲しい。
そもそも、20mAで4[lm]が低いんじゃないのか、最近のは100[lm/W]くらいと聞いた気がする。
しかし仮に100[lm/W]に出来たとしても2000[lm]だと20Wくらい必要であるから、やはりニッケル水素では厳しい。

とりあえず仕様決定

などとごちゃごちゃ考えた結果、とりあえず次のようにした。
バッテリーは12V/8AhのディープサイクルバッテリーをYMT ENERGYから購入した。
手持ちのチャージャ回路で充電する。
LEDは3チップ内蔵の60mAとした。20mAだと数が多くて並べるのが大変だし、そもそも高効率のが売られていない。
しかしハイワットだと放熱が面倒なので。
OptoSupply製OSW44EZ4E1P、公称VF=3.1V、25lm。直径4.8mmの砲弾型。
(最終的にシマリス堂からMonsterFlux SHD-HBWZZRという名称で購入した。色温度指定があったので。)
照明用のLEDは高温で使うのであまり寿命は長くはなく、だんだん暗くなっていくだろう。
仮に実用1個20lmとして2000lmなら100個。
LEDのドライブはMC34063(というか、100円ショップのDC/DCの部品)を使って昇圧定電流回路とする。
基準電圧1.25V、定電流抵抗20Ω(10Ω2直)で1.25/20=62.5mA(104.2%)、22Ωで56.8mA(94.7%)。
2直列は面倒なので22Ωにするか。
3.1V*0.06A*100個=18.6W、18.6/12V=1.55A。バッテリーの放電中止電圧を11Vとすると、18.6/11=1.69A。
これを4回路に分離して対応するとして、0.422A/ユニット。
バッテリーは12V、8Ahの鉛蓄電池(ディープタイプ)だから、1.55/8=0.19C放電。
放電中止電圧までの容量を90%とすると、使用可能容量は7.2Ahで、最大点灯時間は7.2/1.55=4.6時間。
晴天で0.75Ah/日の発電だから、晴天1日の充電で0.75/1.55*60=29分使用可能な計算。
LED100個を4ユニットに分けたら25個/ユニット。
ICの耐圧は40Vだから、最大直列数はLEDのVFmax=3.6Vより11直列。
25個近くにしたいから、5直列*5並列か、8直列*3並列=24個。5直列だと3.1*5=15.5V。8直列だと3.1*8=24.8V。
負荷変動はないし、平均電流さえ合っていればリプルが大きくても問題ないから、
平滑コンデンサの容量は小さくてよさそうだが、耐圧は30V以上は必要そうである。
0.422A/ユニットなら0.3/0.422=0.71Ωが適当。こんな微妙な調整は出来そうにない。
4.6時間もつけっぱなしにする回数は少ないだろうし、電流リミットは諦めるか。
1ユニットのLEDは24〜25個、概略5行5列、約10mm間隔で40mm×40mmくらいのスペース。
セリエで買ったプッシュ式のLEDランプのケースが丁度よさそう。
これなら、回路スペースも十分にあるし、適度に光が分散するので、直接LED見て目が痛くなることもなくなりそう。
軽いので両面テープで固定すれば良さそうだし、一応ねじ止めのくぼみも付いている。
ということで、回路基板は細長くではなく、電池ボックススペースに入るように作る
・・・いやいや、いっそ電池でも動くようにしたらどうだろう。
外しても使えるというのも良い。1ユニットの放電は18.6W/4ユニット/4.8V=0.97Aだから、
単3のニッケル水素の1C以下である。これで1時間くらい使える。
降圧回路の充電リミッタを付けておけば、これでも十分かもしれない。
・・・まあ、既に鉛蓄電池は購入してしまったし、面倒なので昇圧回路の充電リミッタは今回は忘れよう。
25個を円形に並べるとしたら、1,4,8,12個あたりか。
下図は、左が25個、右が24個である。別に5×5の正方形でも良いか。
  
5並列だと配線が大変そうだし、1/25=4%の明るさを増やすために
1.25/(3.1*5+1.25)-1.25/(3.1*8+1.25)=8%-5%=3%
の損失を定電流化で無駄に増やすくらいなら、24個のまま電流を4%増やして明るさを増やした方が
電力的にお得だろうし、で8直列3並列にする。

昇圧定電流回路

回路は下図のような感じ。

昔買った100円ショップのUSBアダプタを分解して部品取りし、ブレッドボードを組んで、動作確認した。
ただし、1000pFは元々ついていた500pのまま、0.71Ωも0.22Ωのまま。
LEDの代わりに、390Ωと430Ωを負荷に使用、どちらの抵抗の時も、Vin=3V位から本格的に出力電流が増加し始め、
5V位で出力電圧は57.5mAに達し安定、14V位まで上げてみたが、出力電流は変わらず。
(22Ωで56.8mAという計算値だったから、ほぼ正確。)出力電圧は23〜25V前後(抵抗による)。
ということで、追加部品は22Ωと180Ωだけで何とかなりそう。
LEDは壊れたらショートするのが一般的なはずだから、定電流なら8直列中8個までは壊れても動作する計算になる、
いい感じ。
とりあえず動きそうなので、同じものを複数作るために100円ショップに行くと・・・あれ、無い。
100円ショップはこういう状況がよくある。別のキャン・ドゥに行ったらありました。
で、ゲットして開けてみたら、MC34063L。回路定数も違うような。
このMC34063Lの末尾のLは何者?。
スペックを探して来て比較してみる(こんなことが出来るのもインターネットのおかげ)。
耐圧はどちらも40Vで同じ。・・・分かった。Iswが違う。
MC34063Aは1.5A、MC34063Lは0.8A。出力電流定格が少ない!。
なんと、(たぶんコストダウンのために)電流定格の小さい特別なICを作っていました。
だから0.5Ωか。
今回は最大電流(バッテリーの放電中止電圧11V )で0.422A/ユニット、
通常の12Vなら0.39A/ユニット、約2倍の昇圧で0.8Aはぎりぎりか。
まあ、鉄骨に取り付けるし、ヒューズもあるし、人がいない時は電源は入れないし、
万一ICが燃えても火事にはならんだろう。
MC34063Aは、ICだけならeBayで送料込みで$12/50個くらい。今後のために買っとくか。
ということで、CNCで基板を削り出して、部品をはんだ付けして基板完成。
  

反射板は?

反射板の素材はどうしようか。円板のサイズはφ90mm。アルミだと確実だろうけど、紙に銀箔で十分な気もする。
白色光源の発光理論限界が250[lm/W]として、今回のLEDは100[lm/W]位だから60%は熱になる。
4.5*0.6=2.7Wの発熱である。
仮に60℃まで温度が上がったとして、黒体輻射エネルギーはシュテファン=ボルツマンの法則から約700W/m2
・・・なんか大きすぎる気がするが、仮に正しいとして、φ70mmからは2.7Wの輻射があることになる
・・・おお、なんか丁度同じ値だ。ということは対流ゼロでも60℃くらいまでしか上がらないという計算だ。
ということで、PP板に粘着アルミ箔(どちらもダイソー)を貼ったものとした

組み上げてみた

LEDが届いたので、とりあえず1台組み立ててみた。動作は問題なし。明るさは、ぎりぎり実用的という感じ。
     
直接見たら残像がひどいが、周辺を照らすと、探し物に十分な明るさはあるが、まぶしいという程ではない。
測定してみたら1m離れて300lx程度だった。実用的に明るいと思える範囲は半径1.5〜2mくらいか。
効率を測定してみた。電源を入れるとみるみる入力電流が下がる。温度上昇でVFが低下しているのだろう。
冷却なしでは結構厳しい感じ。回路のLが触れないくらい熱く、ICもかなり熱い(測れよ!自分)。
温度的に余裕はなさそうだ。熱対策のおまじないで側面に穴を開けた。
さて、肝心の効率であるが、入力電力=12V*0.45A=5.4WでLEDには8直列で23.5V掛かっていた
(入力10Vにすると0.527Aで5.27W。LED側は変わらない。昇圧率が高い方が効率が高いのか?。)。
58mA設定だから、23.5V*0.058*3=4.089W(・・・2.35/8=2.94Vだから、VFが思った以上に低い。
そんなにLEDの中は温度が高いのか?。)
変換効率は75.7%となった。
仮に乾電池1.5V*3直列を抵抗で定電流化したら、2.94/4.5=65.3%。充電電池1.2V*3直列だと81.7%だから、
直列抵抗で定電流化するのとそう効率は変わらない。
定電流スイッチングレギュレータは、電池電圧によって明るさが変わらないというメリットはあっても、
(いい加減な回路定数では)高効率というメリットはなさそうである。

ということで、4台作り、無事設置完了。作成中はやや暗いかと思ったが、倉庫では十分実用的な明るさである。
電線の来ていない倉庫で、これだけ明るい照明が使えれば十分であろう。

追記

Googleはホームページにどのような検索ワードで訪れたかのリストを教えてくれるのですが、
これを眺めてみると「MC34063L」で来られた方が少なからず居られるようです。
中国語のホームページなのでスペックシートを見つけられないんでしょうか。
このような場所は短期間で変わるのが常だし、リンクを貼ってもすぐ切れるでしょう。
かと言ってコピーをそのまま貼るのも良くないでしょう。
ということで、主要な差異をピックアップして載せておくことにしました。
下表を見れば分かると思いますが、ほぼ最大電流が減っただけです。
foscの違いは条件の違いによるものでしょうし、
VCEsatの差異は定格電流が減ったのに同じ1Aで測定すれば上がって当然でしょう。
逆に言えば同じ1AでVCEsatが増えたという事は、トランジスタの面積が小さいのでしょうから、
コスト削減のためにチップを小さくしたのでしょう。

 

MC34063A

MC34063L

(MC34063DL)

Isw

1.5A

0.8A

fosc

24/33/42kHz

CT=1nF

38/43/48kHz

CTopen

VCEsat

-/1.0/1.3V

-/1.5/1.8V

Isw=1A, Vc(DR)=Vc(SW)

VCEsat

-/0.45/0.7V

-/0.9/1.2V

ISW=1A, VC(DR)=5V

IBIAS

-/-20/-400nA

-/-40/-400nA



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