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空想DIYを紹介するページです。


MRIのメカニズム

数分おきの作業を何時間か行う必要が生じて、しかし自動化するほどでもなかったので、
待ち時間の暇つぶしにMRIの原理を調べてみました。
ながらの短時間作業なのでいい加減ですが、その分浅いので理解しやすいかも、とか思い公開します。
(あとで読み返して分かり難そうに思えた部分は編集しました。)
全然あさっての間違いだったら済みません。

はじまり、はじまり

多くのMRIの原理説明が分かり難いのは、
3次元空間から1点の情報を読み出すために必要と思われる4つの工夫の内の1つしか具体的に説明されないからと思う。
そこでMRIのメカニズム(原理)を成す(と思う)4つの工夫について、光学応用との双対で説明してみようと思う。


1つめ

1つめはよく語られているので改めて説明するまでもなさそうだが、双対イメージに慣れてもらうために一応説明して置く。
核磁気共鳴は応用を考える上ではレーザー結晶の励起と類似した現象で、蛍光現象のようなものである。
すなわち、非常に狭い範囲の周波数の電磁波のエネルギーを吸収して励起する。
違うのは吸収する周波数が磁界強度に対して広範囲で変化する点である。
従って、傾斜磁界(位置に対して磁界強度が変わるような磁界)を掛けて置き、特定の周波数の電磁波を与えると、
その周波数に対応する磁界強度の場所にある原子核だけが励起する。
原子核の種類によって磁界強度と周波数の関係は変わるが、
人体の場合は水素が大多数なので以降の説明ではプロトン(水素原子)だけを考える
(磁界強度と励起する周波数の関係は一意であるとする)。
一旦励起したら、電磁波を与えるのを止めても、蛍光と同様に暫くは発光する。
可視光と異なりこの周波数は例えば1.5[T]の磁界強度で64MHz程度と低い周波数であり、
その(真空での)波長は4.7m程度と長いので、
どこが光っているか(電磁波を出しているか)を電磁波の空間強度分布により観測するのはほとんど見込みがない。
つまり、電磁波を出しているかどうかは測定できるが、どこから出ているかを測定するのはほぼ無理である。
そこで、磁界強度によりある場所だけを選択励起してこれから出てくる電磁波の強度を測定する。
励起させる場所を順次変えてやればどこがどの程度光るかを画像化できる。
これを利用してX,Y,Z軸の内、まずZ軸を選択する。Z軸方向に傾斜磁場を掛けた状態で特定の周波数の電磁波を加えると、
Z軸方向の特定の面にあるプロトンだけが励起する。磁界強度を変化させると励起する面が変わるので、
少しずつずらしながら何度も測定すればスキャンできる。

2つめ

磁界を加えられたプロトンは屈折率の変わった媒質のようなもので、磁界が加えられた中にある振動は周波数が変わる
というものである。
発光中に磁界を加えるとその振動が影響を受けるということは、
エコー観測中に傾斜磁界を与えると、その傾斜に応じて周波数が変化する。
X軸方向に一定の傾斜磁界を加えて、出てくる電磁波の強度を周波数ごとに調べれば、X軸方向に対しての情報が得られる。

3つめ

緩和中に磁界を逆転させるか、それと等価となる反転パルスを加えると、
励起から反転までの時間と同じ時間の経過後に再び電磁波エコーが極大となる。
磁界によって方向性を支配される(かつ自由度が増加しない)運動による分散は、
磁界を反転させることによりすべての運動を逆転できるはずだというアイデアに基づいている。
分散と言う運動が逆転すれば、再び分散しない状態に戻る時刻が訪れる。
時間の逆行を起こすようなアイデアであり、分散しない状態に戻った瞬間に電磁波の位相が揃って電磁波の強度が極大となる。
極大になったタイミングで電磁波を観測する。

4つめ

2つめと3つめの混合である。
励起したプロトンの振動の分散速度は磁界強度により変化するので、
磁界逆転時刻の前後のどちらかだけに磁界を印加すると極大に戻ることが出来なくなるだろうというものである。
従って、場所によって磁界強度を変えておけば磁界を印加しなかった場所から出てくる電磁波だけが極大となる。

先に書いたように磁界を加えられたプロトンは屈折率の変わった媒質のようなものである。
プリズムを通過する光にとって媒質中の(仮想的な)時間経過は屈折率により変化するのと同様に、
反転前に磁界をかけると反転後に極大となるタイミングがずれる。
従って正確に言えば、反転前後は必ずしもぴったり同時間に合わせる必要はない。
いずれにせよ、あるタイミングに極大となるのは特定の磁界を経験した場所だけである。
一般的な光学プリズムは均等な屈折率で通過距離(通過時間)を変化させるものであるが、
MRIの場合は屈折率の方に勾配を持たせる感じである。
これを利用してY軸を選択する。緩和期間(電磁波を与えるのを止めてから、電磁波が出ている期間)であって、
かつ反転の前か後のどちらか(通常はより分散していない前)だけに、傾斜磁界を加える。

ある時刻で観測されるのはその時刻に極大を迎える場所からの信号が支配的なので、
1つの緩和期間に対して時刻ごとに測定すれば同時にY軸方向に対しての複数の情報が得られそうであるが、
実際にはこれは難しいだろう。
極大となる現象はそれほど鋭くはない(全ての運動を完全に逆転できるわけではないで、多少ばらつく)し、
時刻が経過するほどにばらつきは大きくピークは小さくなるのでなるべく早い時刻での測定が重要となる。
従って時間軸については情報の鮮明化を重視する必要があると考えられる。
実際の装置でも(代表)測定時刻は固定にして、繰り返し測定しているようである。


はてさて

以上のような工夫の組み合わせにより、3次元の1点からの信号だけを選択可能となる。
実際の装置では磁界発生の都合などのため、X,Y,Zの直交座標は用いないようである。
また測定時間を減らすために、より広範囲な周波数空間、位相空間を利用して
同時に幾つもの点の情報を得ているようである。
しかしおおもとの原理は(恐らく)こののようなもののようである。
さて、光学との双対による説明は成功だっただろうか、あるいは逆効果だっただろうか。
分かり易く工夫したつもりではあるが、速度ゼロの光というのがちとイメージしにくくて逆効果だったかもしれない。




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