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空想DIYを紹介するページです。


炭はなぜ黒いか?

炭はなぜ黒いか?に対する自己流の説明です。

バンドギャップで説明する人たち

炭が黒い理由を聞かれて、ダイヤモンドが透明な理由を長々と説明したあと、
グラファイト結晶のπ軌道の電子が色々な波長を吸収するからだ、と説明したものが散見されます。
それは何だかおかしい。
そもそも「ダイヤモンドが透明な理由」を聞いている訳ではない。
散々関係ない話を聞かされた挙句、肝心な部分を誤魔化されたような気になるのは私だけでしょうか?。
光から電子にエネルギーを移すには不可逆性が必要で、
恐らくそれは電子軌道の変形による電子の移動(光の振動よりもゆっくりした変化)によるもので、
従って電子の軌道が近接はしているが離れている状況が必要と思います。
グラファイト結晶のπ軌道はぎりぎり離れているらしく、
板状の結晶が沢山重なったグラファイト結晶は層の重なり具合による影響を受けてπ軌道が離れたり付いたりしているらしいので、
非常にバンドギャップが小さい状態があると言えなくもない。
従ってダイヤモンドの考察をそのまま延長すれば、非常に長い波長の光でも吸収する状態という事になります。
しかし、格子振動だけで軌道が頻繁につながるような状態はもう導体と同じで、支配的な不可逆性が発生するとは思えない。
バンド理論で考えてよい範囲を逸脱していると思うのです。
そもそも、グラファイト結晶は黒くは見えません。私にはむしろ銀色に見えます。


配列がぐちゃぐちゃなので黒い?

「炭は配列がぐちゃぐちゃなので黒い」と言ってのけていた人もいました。
これは明らかに逆でしょう。
そもそもミクロに見れば固体の中の原子核の密度などとても低くて、
光にとってはがら空きの空間を通り抜けるようなもので、
本来固体は透明であるはずで、むしろ透明でないものの存在の方が不思議なのです。
原子が整然と並ぶと電子が(と言うよりは電荷でバランスしている電界空間が)揺らされて
光のエネルギー(電磁空間の振動)を電子の運動に変換してしまう。
だから結晶には色があるのです。
透明な結晶は可視光より短い波長に対して不透明なので、可視光しか見えない人には透明に見えるだけなのです。
ところがガラスは原子の配列がかなり完璧にぐちゃぐちゃで、このため透明な結晶とは違った理由で透明です。
つまり配列がぐちゃぐちゃならば黒からは遠ざかるはずです。

しかし、「炭は配列がぐちゃぐちゃなので黒い」という説明を、私は案外正鵠を得ていると思います。

私の説明はこうです

グラファイト結晶のπ軌道は六角形にリング状に並び、リング状に自由電子が流れます
(最近の私には「自由電子」があまり自由そうには見えなくなっていてこの言葉には違和感がありますが、
一般に言われる所の「自由」電子です)。
グラファイト結晶はこの六角形が平面に並んだ状態なので、平面上にほぼ自由に渦電流が流れる状態と言えます。
金属が金属光沢をもっていて光を良く反射するのは、自由電子による渦電流が磁界の変化を妨げるように発生して
電磁波の侵入を邪魔するためで、
グラファイト結晶も同じように光を良く反射します。
炭はグラファイト結晶が出来掛かった状態、つまりグラファイト結晶の鱗片が無数に散らばった状態のはずです。
つまり、微小な鏡が色々な方向を向いて無数に散らばった状態という訳です。
ここまで説明すれば何を言いたいかはお分かりでしょう。
そう、これは完全黒体として用いられるプランクの模型(黒体空洞)と同じような状態です。
黒体空洞とは下図(左)のようなもので、元々は光を出す方法として考案されたものです。
空洞に小さな穴が1つ空いています。この穴に矢印のように光が入ったとします。
内壁が完全反射しない限り、内壁がどのような光の反射吸収特性を持っていようとも、
入射された光は1000回、10000回と反射していく内に吸収されてしまうだろう、これは理論的な完全黒体に近似する、
と言った感じのものです。


         

    プランクの模型(黒体空洞)          炭の場合

右図は炭の場合の模式図で、白く図示した板状の長方形がグラファイト結晶を示します。
実際のグラファイト結晶片はもっと沢山の層から出来ているでしょうし、寸法比もいい加減です。
完全な鏡ではないだろうから、反射しきれずに鏡を抜けてしまう(透過する)場所もかなりあるでしょう。
あくまでもポンチ絵です。

このように微小な鏡が色々な方向を向いて無数に散らばった空間に入射した光も、黒体空洞と同じように
何度も何度も反射を繰り返し、なかなか外には出てこれないでしょう。
固体内がどのくらい光の吸収が悪くても、1000回、10000回と反射すればいずれは吸収されてしまうでしょう。
従って、より黒い炭とは、グラファイト結晶鱗片が多く含まれているが完全なグラファイト結晶ではないか、
あるいは方向の揃っていないグラファイト粉末ということになります。

解説:以上の考察は十分に黒くて薄い絶縁体を探すために行ったものですが、
少なくとも炭と同じメカニズムでは実現できそうにない、というのが結論でした。

ちなみに、本題とは関係ありませんが自由電子の運動だけではある波長以下の電磁波は反射できず
(電子の自重の慣性による遅れのため追従できない)、
金属が光を反射する現象には原子核により強く捉えられている電子軌道の集団的な揺らぎも関係している、
ということが昔の人によって計算されています。



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