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空想DIYを紹介するページです。


エアーフィルターのメカニズム

最近放射性物質の回収として、バグフィルターの話題が散見されます。
しかしこれらの話を読むと大多数がエアーフィルターのメカニズムに関して
誤った理解をしているように思われます。
エアーフィルターが園芸で用いられる、砂の粒度を分ける「ふるい」のようなものだと
考えているように読めるものが多いのです。
エアーフィルターは隙間が狭いことによって粒子が通れなくなる訳ではありません。
エアーフィルターの隙間は捕集する粒子よりもずっと広いものが多いです。
仮に隙間が狭いことによって通れなくなるというメカニズムだと、
「多くのエアーフィルターが、200〜300nm(0.2〜0.3μm)位の粒子を最も通しやすく、
それより小さい粒子は逆に通し難い」という性質を説明できません。

私が理解しているエアーフィルターのメカニズムは以下のようなものです。

想像しやすいように、竹林で説明してみます。
ここでの竹林のイメージは京都などでよく見られる孟宗竹ないしは真竹の林です。
竹林は沢山の竹が林立していますが、その間隔は1m弱でしょう
(タケノコを採るために栽培管理されている竹林は数mでしょうが。)
さて、ここに高速にサッカーボールを打ち込むとします。
サッカーボールは竹の間隔よりは小さいです。
サッカーボールは竹林を抜けられると思いますか?。

気体分子と異なり紛体粒子は慣性が大きいから小回りが利きません。
繊維が密集していると直進的な運動をする紛体粒子は繊維に衝突します。
これにより運動エネルギーを失ない、通過を阻害されるのです。
さらに、原子間の引力などにより一定以上運動エネルギーを失った粒子は繊維に補足されてしまいます。
先の竹林とサッカーボールの例で言えば、竹に弱粘着剤が塗ってあるような感じです。

竹林に風が吹いているとして、ボールが大きいと弱粘着が剥がされてボールは風下に流されやすくなります。
(同時にたくさんの気体分子が衝突すると、吸着されていた粒子が分離されます。)
また小さいボールほど運動エネルギーが奪われやすくなります。
従って、むしろ粒子が小さいほど通過しにくくなります。
(もちろん、非常に大きい粒子は隙間を通れずに通過を阻害されます。
隙間が0.3μm以上あると大きい粒子が抜ける確率が高くなります。)

このように、エアーフィルターは粒子よりも細かな隙間が空いているというものではなく、
繊維に衝突して粒子が運動エネルギーを失うのが主な効果です。
従って、エアーフィルターに求められるのは隙間が細かいことではなく、
粒子の運動エネルギーを奪う能力と、粒子の吸着力ということになります。

しかし、粒子の中にはうまく風に乗って抜けてしまうものが僅かに発生します。
集塵率が確率的表現なのはフィルターに大きな穴があるからではなく、
穴のサイズによるふるいと違って、うまく抜けてしまう粒子がゼロではないからです。

ちなみにバグフィルターはbag filter、つまりエアーフィルターを袋状にしたものですが、
用途の違いから素材に要求される特性がかなり違うようです。


さらにちなみに、これは良く知られていることですが、
風邪が流行っている時にするマスクはエアーフィルター的な効果を期待するものではありません。
風邪のウィルスはある程度の湿気があると感染性が著しく低下するため、
マスクをすることで気管内の湿度を上げるのが主目的です。
従って、風邪の予防のマスクの場合は、
フィルター機能よりは気管内を適湿に保つ機能の方が優先されます。



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