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錯視のメカニズム

錯視のメカニズムに対する自己流の説明です。

錯視のメカニズムは心理学的、あるいは脳科学的に説明されることが多いが、私にはそうは思えないものが多い。
近年では「視細胞は脳の一部である」として、目の機能的部分を脳科学に取り込むかのような説明もあるが、
目の機能はあくまで目の機能であって、脳の機能とは別のものであると考えた方が
私にはより科学的(よりすっきり説明できる)だと感じる。
以下は私的なメカニズムの理解である。

1.露出補正

カメラなどと違い、人の網膜細胞は部分部分に露出補正(明るさ補正)機能を持っている。
より正確に言えば人の視細胞は絶対的な明るさではなく、明るさの差を測定するセンサーであり、
ぼやけた(平均化された)光(周辺光と呼ばれる)と、焦点の合った光の、明るさの差を検知する。
このぼやけ具合は目の全体に対してではなく、網膜のある(比較的狭い)範囲に対して起こる。
つまり視野全体で見ればぼやけ具合にも明暗がある。
従って、人の目は絶対的な明るさを測定することは出来ないし、視野全体の平均的な明るさを基準に測定することも出来ない。
視野の中で、周辺光(ぼやけ具合)に差が出るくらい離れた部分では、絶対値が同じ明るさでも違う測定値が出力される。
明暗や色の濃さに対する錯視のほとんどはこれで説明が付く。
視野の中の平均的に明るい部分は周辺光が明るくなり、平均的に暗い部分は周辺光が暗くなる。
結果、視野の中の平均的に明るい部分にあるものは平均的に暗い部分にあるものより黒く(暗く)検知される。
これは認識の問題ではなく単純な目の機能の問題である。

色は(ヒトの場合)検知波長の異なる3つのセンサーの明暗信号なので、明暗と同様の効果が発生する。

(余談であるがカラスの網膜には紫外線を検知する第4のセンサーがあり、夜目も効くことを知ったのは
比較的最近のことである。
紫外線センサーによってカラスは日中も人の目に見えないものまで見えているらしい。
世の中は知らないことで満ちている。)

また、輪郭が強調されて感じる原因のある程度は、これが原因であると考えられる。
すなわち、脳で輪郭強調の信号処理を行わなくとも、目の測定信号自体が輪郭(空間に対する高周波成分、
明暗の変化の微分成分)に対して強い出力となる。
(例えば白の明るさの絶対値を10、黒の明るさの絶対値を0とすると、周辺光が白(10)の部分では基準値が10なので
差の信号として白は0と出力されるが、白と黒の境界付近では周辺光は中間的な明るさ(5)となり、
5を基準にした白(10)の差信号は5と検知されるので、白地の部分より境界付近の方がより白く測定される。
同様に黒地の部分の黒の出力は0であるが、5基準とした黒(0)の出力は-5となり、
黒地の部分より境界付近の方がより黒く測定される。
周辺光(基準値)は境界に近づくにつれて次第に変化するので輪郭は輪郭強調画像として目から出力される。)

文字列が傾斜して見える錯視はこの輪郭強調効果によって説明が付く。
目からの信号自体が傾いているので、傾いて認識される。

従って、視野を狭めるとこの種の錯視は低下する。
対象部分だけを視野に入れるようにして、この視野を順に比較対象間で動かせば、錯視の効果は少なくなる。

比較対象による錯視の多くもこれによって説明が付く。
背景の線の密集している所は、線のまばらな所よりも輪郭がぼやけ、輪郭測定情報が膨張する。
結果、背景の線の密集している所は、目からの信号自体が大きくなるから大きく認識される。
大きさの違うものを周辺に配した図でも、比較すべき図形と周辺の図形の距離が(明暗的に)同じくらいであれば
ほとんど錯視は生じないが、接近すると輪郭が膨張する。
このためこの種の錯視では、周辺図形が小さい方を比較すべき図形に近づけたり、
周辺図形を比較すべき図形の周囲全てに配さず地を開けたり、地色とのコントラストの差を変えたりして、
輪郭膨張を誘っている。


2.露出補正に掛かる時間

周辺光のぼかしは、(網膜の)空間的な光の分散によるものだけでなく、時間的にも起こる。
これは多くの電子回路において基準電位を安定化させるために時定数を長くしているのと同等である。
視細胞も周辺光に応じてイオンが移動し基準電位を変化させるが、イオンの移動速度は制限されている。
このため、実際の周辺光が急に変化しても基準電位は急には変化しない。
回路の基準電位の時定数がそうであるように応答は指数関数的であり、
基準電位の変化は大きな変化に対しては速く、小さな変化に対しては遅い。
動きの錯視の多くはこれで説明が付く。
画面を揺らした時に、よりコントラストの高い部分は基準電位が速く反応し、コントラストの低い部分は遅く反応する。

3.眼球運動

(恐らくはぼやけを(網膜の空間的に)より広範囲に平均化させるために)眼球は小刻みに動いている。
これは空間的なぼやけ範囲を広げる反面、周辺光を短時間に変化させることにもなるので、
時間的には積分時間が不足して基準電位の曖昧さが増す。
眼球運動による網膜像の位置変化は視点中心よりも周辺の方が大きくなるため、視点の周辺の方がこの効果は大きくなる。
結果視野の周辺では細かな明暗はぼやけに時間的に反応できなくなる。
つまり、細かな明暗の動きが測定できなくなる(大きな残像が残る)。
静止画が動いて見えたり、きらめき格子錯視などはこれで説明が付く。
ただし、網膜の空間的、時間的ぼかしは構造的なものなので個人差は少ないと思われるが、
眼球運動は経験的(後天的)要素が高いと思われる。
例えば動体視力の高いと言われる人は恐らく眼球運動が鈍い(少ない)のではないかと思われる。
つまり、空間的な明暗の差を重視する必要の高い環境にあれば眼球運動は活発になり、
動体視力を優先する必要の高い環境にあれば眼球運動は鈍くなると考えられる。
静止画で大量の情報を処理する必要の高い現代人は、比較的眼球運動が活発なのではなかろうか。
パソコン作業で目が疲れやすいのも、活発な眼球運動を強いられるからかもしれない。
また、眼球運動は輪郭膨張を抑制できるはずなので、大きさの錯視は眼球運動の活発な人には起こりにくいはずである。
画家の目とかは、さぞかし活発に動いているんではなかろうか。
そういう意味では、目を見れば(静止画的な)訓練量が分かるかもしれない。
恋愛対象がきれいに見えるのは目を奪われて眼球運動が停止するためかも。
ということは、アイキャッチポイントを作って眼球運動を静止させることが出来ればより美人に見せることが出来るのかな?。
例えばほくろがあると美人に見えるとか、光ものやリボンやフリルなどの目を引くもののいずれかを1か所だけ使うと良いとか、
見つめると目に視点を集中させられるとか。(後半妄想入っています。)
もちろん、訓練すれば場合に応じて眼球運動を緩急自在にできる可能性はある。



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