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空想DIYを紹介するページです。


電子レンジと金属

Webぼーっとさまよっていたら、ふと気になるものに行き当たりました。

電子レンジに金属を入れると、
「金属は高温になりすぎて危険 → 答え(ウソ)」
うんうん。
「金属はマイクロ波を反射するため加熱することはできない。」
えーっ。

今回は電子レンジと金属について書きます。

電子レンジに金属を使ってはいけない理由

電子レンジに金属を使ってはいけない理由を検索してみると、幾つかの話題がありました。

1.放電音で苦情があり、説明が面倒なので、ダメという事にして苦情に対応しなくて良いようにした。
・・・なっとく!。

2.反射されてマグネトロンに返ってマグネトロンが異常高温になる。
・・・また確率の低そうな。導波管の出口に丁度焦点の合うような反射って、狙ってもなかなか出来そうにないのに。
しかしそれを言うだけのマージンの無いぎりぎりの設計をしているってことでしょうな。

3.壁面との放電で故障することがある。
・・・まあこれはあるかな、アース線をまともにつながずに使っている人も少なからず居るでしょうしね。


水がなぜ加熱されるか

まず、水はなぜ加熱されるのでしょうか。
電子レンジは2.45GHzの電磁波で加熱します。大気中の波長は真空中とほぼ同じで約122mm。
電子のエネルギー換算で約10μeVなので、原子の電子軌道の励起には明らかに不足します。
強磁場中ではないので、核磁気共鳴(スピン共鳴)も除外されます。
分子の共鳴波長は赤外線領域(10μm前後=30THz前後)なので、これも除外されます
(分子の共鳴を利用したものが赤外線分光ですね)。
(「水分子が回転共鳴して云々」と説明されているのも見かけましたが、定量的に数字が(桁が大幅に)合いません。)
つまり、原子や分子を相手にするには2.45GHzは周波数が低過ぎるってことですね。

電磁波による、もっとマクロな熱損失(受熱)となると、誘導損か誘電損となります。
水分子は極性が非常に高いので誘電損が大きく、支配的なのはこれになります。
つまり、電子レンジとは誘電加熱装置である訳です。

ところで、電子レンジに使ってはいけない樹脂としてメラミン樹脂があって、
「樹脂自体が加熱するから」とい うようなことが書いてありました。
確かに一般的な樹脂の誘電率が2〜3なのに対して、メラミン樹脂は10程度なので高い方ですが、
陶磁器だって4 〜7くらいなので、あえて高いという程ではない。
メラミン樹脂は製造工程でホルムアルデヒドを使用するので 、加熱して溶出するのが怖くて
(まともに作られたものなら残存量は微量でしょうし、メラミン樹脂が熱分解してもアンモニアしか出ない気がしますが)、
でもそんなことを書いたら余計な不安をあおりそうなので、そういう理由にしておいて、
万一(まともに作られていないメラミン樹脂の食器を使って)問題が起こった場合の免責にでもしようとしているのでしょう
(たぶん)。

いずれにせよ水の誘電率は80程度と、多くの物質と比較して飛び抜けて大きいので、この誘電損が支配的になるでしょう。

電子レンジに金属を入れたら

電子レンジに金属を入れたらどうなるでしょう。
金属は誘電率が非常に高い物質とも言えるわけで、誘導損も誘電損と等価(延長)と考えられなくもない。
従って、金属は電磁波で非常に良く加熱されます。
もちろん表皮効果がありますから、加熱されるのは極表面だけですし、大半は反射されてしまうでしょう。
しかし、アルミ箔の場合は厚みは例えば12μm程度で、
2.45GHzでのアルミの表皮効果の約1.7μmに対して十分厚いとは言えないですから、
それなりに加熱されるはずです。
もちろん表面積が大きいので冷却効率が高くてあまり温度は上がらないでしょうし、
電磁波を止めたら即座に室温付近まで冷却されると思いますし、
薄くて熱量が小さいので例え熱いうちに触ってもそれほど危険ではないでしょう。

電子レンジとは水だけを選択的に加熱する装置ではなく、汎用の誘電加熱装置なのです。
誘電率さえ高ければ(誘電損による発熱が放熱を上回れば)何だって加熱できます。
導体は誘電率が非常に高い物質と言えるので、金属だって黒鉛だって加熱できます。
相変化によって熱を奪われず、かつ十分に保温された状態であり、かつ(内部だけ)誘電率がそこそこ高ければ、
電子レンジは1000℃以上にだって簡単に出来るのです。
発熱点として黒鉛などの高耐熱導電物質と
その発熱点を適当に分散させかつ高耐熱で(高温で)熱伝導の良いアルミナなどを適当に混合したものを、
誘電率の低い耐火断熱材に包んで炉心付近に設置すれば、簡易真空炉としてこれ程重宝な装置もないのです。
これに関してはその内に別の記事で説明する予定です
(って以前その記事は書きかけてとっちらかって放り出してしまったんですが、・・・まあその内に)。



2013-4/7




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